皮膚NTDsとは
ブルーリ潰瘍
ブルーリ潰瘍は、環境中に存在する細菌1)のひとつMycobacterium ulceransによって引き起こされる皮膚に大きな潰瘍をつくる疾患です。人への感染様式は未だに分かっていませんが、患者さんが川や湖などといった水辺の近くに集中をすることから、細菌が生息する環境と直接の接触か、あるいは媒介生物を通して感染することが知られています。
ほとんどの患者は、ベナン、カメルーン、コートジボワール、コンゴ民主共和国、ガーナなどのアフリカの西部と中部から報告されています。熱帯地域に集中する感染症と思われがちですが、オーストラリアや、そして日本2)でも症例の報告があります。特に、最近は、オーストラリアのビクトリアといった地域での患者の報告数が増えており、その原因が注目されています。
ブルーリ潰瘍は多くの場合、痛みのない結節(うずら卵の大きさくらいまでのしこり)で始まります。また、硬結(プラーク; 結節よりも範囲が広い皮膚の下にできるできもの)や、脚、腕、顔のびまん性の腫脹(浮腫)として現れることもあります。放置をしておくと、のちに大きな皮膚潰瘍へと進展します。このような症状の背景には、マイコラクトンという毒素が深く関与しています。マイコラクトンには、皮下脂肪織を溶かす作用や、局所免疫を抑制する作用があり、この疾患が深い潰瘍をつくり、普通であれば痛いはずが、痛みや発熱を起こすことなしに進行していく特徴につながっています。この特徴は、患者さんが異常に気がつくのが遅れて、診断が遅れることにもつながっています。
ブルーリ潰瘍は、2つの抗生剤(リファンピシンとクラリスロマイシン)の8週間の混合投与で、治る病気です。しかし、潰瘍ができてからの治療は、抗生剤の他に潰瘍の治療も必要となり、ときには手術も必要になります。また、たとえ潰瘍は閉じたとしても、大きな潰瘍は、関節の拘縮や見た目の変形につながります。長期的な障害を予防し、治療費を減らし、人として尊厳のある生活を維持するためには、早期診断と治療が最も確かな方法です。
1) 特に、抗酸菌という菌の種類になり、ブルーリ潰瘍の他には、例えば結核やハンセン病が抗酸菌による病気になります。
2)日本のブルーリ潰瘍については、別途説明のページを設けます。
※「参考文献: WHO Buruli ulcer (Mycobacterium ulcerans infection)」
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皮膚/粘膜皮膚リーシュマニア症
リーシュマニア症は、寄生原虫の一種であるリーシュマニア(Leishmania)が非常に小さなハエ(サシチョウバエ類)に媒介されて感染する寄生虫疾患です。リーシュマニア原虫の種類によって症状が異なり、皮膚リーシュマニア症、内臓リーシュマニア症、粘膜皮膚リーシュマニア症の主に3つの病型があります。リーシュマニア症は、熱帯雨林~乾燥地帯の田舎で多く、都市部で少ない傾向にあります。しかしイラクのバクダットやアフガニスタンのカブール、ブラジルの東北部では都市部周辺や都市部でもみられています。サシチョウバエが活動する夕暮れ時から夜明けまでの時間帯は感染のリスクが高く、日中の暑い時間帯には刺されることは少ないです。サシチョウバエは蚊の約1/3の大きさと小さく羽音もしないので見つけることは困難です。刺されると痛みを伴うことがあります。リーシュマニア症のリスクが高い旅行者は、冒険旅行者、野鳥観察家、途上国でのボランティア隊員、建築作業員、夜間にアウトドアをする人などです。
皮膚リーシュマニア症の患者さんは、アフガニスタン、アルジェリア、イラン、イラク、サウジアラビア、シリア、ブラジル、ペルーの8つの国に多くみられます。しかし、世界保健機関(WHO)への報告ルートがまだ整備されていないために、知られてない地域にも患者さんがいる可能性があります。
典型的には刺されてから数週間もしくは数ヶ月のうちに発症します。刺された皮膚に小さな丘疹ができ、徐々に大きくなっていき潰瘍になります。通常、潰瘍に痛みはありませんが、細菌感染を起こすと痛みを生じます。潰瘍は治療しなくてもやがて治りますが、場合によっては数ヶ月もしくは数年続き、傷跡が残ります。また、一部の患者さんでは粘膜皮膚リーシュマニア症に移行することがあります。粘膜皮膚リーシュマニア症は、鼻、口、咽喉の粘膜が破壊され、皮膚リーシュマニア症よりも重症な病型になります。
皮膚/粘膜皮膚リーシュマニア症の治療は、リーシュマニア原虫の種類や地域などで異なります。現在、ワクチンや予防薬はなく、サシチョウバエが最も活動する時間帯である夕方から夜明けまでの時間帯に屋外で活動することは避ける、肌が露出しないような服装をし、DEET配合の防虫剤を使用するなど、サシチョウバエとの接触を減らすことが予防になります。
※「参考文献: WHO Buruli ulcer (Mycobacterium ulcerans infection)」
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カラアザール後皮膚リーシュマニア症
カラアザール後皮膚リーシュマニア症(post kala-azar dermal leishmaniasis; PKDL)は、内臓リーシュマニア症 (カラアザール) の合併症です。内臓リーシュマニア症が未治療あるいは不十分な治療を受けた場合にみられます。リーシュマニア・ドノバニに代表される複数の種類のリーシュマニア原虫が原因で、主にインド、ネパール、バングラデシュ、およびアフリカ東部(スーダン、エチオピア、ケニア)の地域における風土病です。
皮膚リーシュマニア症とPKDLの皮膚病変は異なります。PKDLの症状は様々で、顔と上半身を中心とした低色素斑から丘疹・結節、また、時に病変は四肢、生殖器、舌などにも広がることがあります。多種多様な症状をとるために、他の疾患との区別が難しいことが多くあります。特に、PKDLが蔓延する地域ではハンセン病も蔓延しており、2つの病気を区別することは簡単ではありません。
PKDLは、患者さんの疾病負荷は限られていますが(少なくとも初期は)、感染の保有者となり、他のヒトにうつす可能性につながることから、早期の診断と治療が疾病対策の上で重要です。
※「参考文献: WHO Buruli ulcer (Mycobacterium ulcerans infection)」
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ハンセン病
ハンセン病は、らい菌という抗酸菌の一種(結核菌の仲間)を病原体とし、皮膚と末梢神経を主におかす慢性感染症です。乳幼児期にらい菌に大量・頻回に接すると発症するとされています。潜伏期間は極めて長く、数年から数十年にもおよぶことがあります。発症には、感染以外にも、感染をしたヒトの免疫応答反応がどのようにらい菌に対してはたらくかが深く関わっています。そのために、多種多様な症状を取ります。早期発見および治療を行わないと、顔や手足に外観を損なう後遺症を残します。さらに、毛根や汗腺も障害され、脱毛や発汗低下などの症状が発生します。
WHO(世界保健機関)は、下記の3点にあてはまる場合、ハンセン病と診断する基準をもうけています。
- 知覚がない(知覚脱失)あるいは低下した皮疹 (低色素斑、紅斑、結節など)がある。
- 知覚脱失を伴う末梢神経肥厚や運動障害がある。
- 皮膚の抗酸菌塗抹検査で陽性となる。
治療は、多剤併用療法(multi-drug therapy (MDT); ダプソン、リファンピシン、クロファジミンの混合療法)で、半年から1年間程度の投与を行います。この治療の効果は高く、これまで多くの患者さんたちが治療を受け、治癒しました。一方で、副作用の問題(ダプソン過敏性症候群、リファンピシンの肝障害や出血傾向など)、らい菌の耐性化の問題、新規の薬の開発が進んでいない問題が、最近議論されています。
世界的にはハンセン病の発症ケースは徐々に減少していますが、いまだ感染が多く見られる地域を抱えている国もあります。たとえば、インド、ブラジル、インドネシア、アンゴラ、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、マダガスカル、モザンビーク、ネパール、タンザニア連合共和国やフィリピンがそれにあたります。WHOに報告される最近の年間新規発症数は約20-25万人であり、中でも、インドの報告例が全体の過半数を占め、これにブラジル、インドネシアなどが続きます。
日本においても、ハンセン病の患者さんの発症は、年間に数例あります。これらの症例の多くは、蔓延国からの輸入症例ですが、ときに、日本人の高齢者での発症があります。これは、らい菌の長い潜伏期間(日本がまだ蔓延時期であった20世紀前半に感染)を証明するものでもあります。
※「参考文献: WHO Buruli ulcer (Mycobacterium ulcerans infection)」
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リンパ系フィラリア症
フィラリアという寄生蠕虫(ぜんちゅう)を病原体とし、蚊(アカイエカ)に媒介されて人に感染する病気です。蚊が人の血液を吸ったとき、ミクロフィラリア(0.3mmくらい)が人体内に入り、その後、血液を貪食しながら成長をしていきます。ミクロフィラリアはメスでは5cmほど、オスでは3cmほどにまで成長します。メスとオスは交尾を繰り返し、ミクロフィリアを多数産みます。ミクロフィラリアは人の体液の循環をつかさどるリンパ管に好んで生息するため、リンパ液の循環を滞らせてしまいます。そのことにより、四肢を主としたリンパ浮腫あるいは生殖器の浮腫(陰嚢水腫)といった諸症状を発症します。四肢のリンパ浮腫は放っておくと、皮膚が硬くなり、象皮病という状態になります。
リンパ系フィラリア症は、感染初期はあまり症状がないため、多くの人は感染に気付きません。数年〜数十年という年月をかけて、症状が出現、そして徐々に悪化します。特に、急性期の症状として、リンパ浮腫で痛んだ皮膚(皮膚バリア機能の低下)から細菌が侵入することで発症する2次感染と、それに伴う悪寒戦慄と発熱があります。この急性期の症状を繰り返すと、リンパ浮腫の症状は恒常的にさらに悪化するため、衛生的な生活環境を整えるなど、2次感染を起こさないように予防が重要です。
リンパ系フィラリア症の予防対策としてもっとも重要なのは、蚊に刺されないようにすることです。長そで、長ズボンを着用し、露出した肌には防蚊剤を塗布することが必要です。また、睡眠時には蚊帳を使用することも有効です。
WHOは、蔓延地域においてはリンパ系フィラリア症の感染あるいは発症を未然に防ぐために、DEC(クエン酸ジエチルカルバマジン)とアルベンダゾールの2剤、または、アルベンダゾールとイベルメクチンの2剤を年1回、4~6年間継続して感染地域で集団投薬を行うことを推奨しています。蚊の媒介によって人から人へ感染するため、コミュニティ全体で制圧する必要があるためです。
リンパ系フィラリア症は熱帯・亜熱帯の73カ国で1億2千万人以上が感染していると言われています。
日本も、ひと昔前まではリンパ系フィラリア症の蔓延国でした。1940年代には、少なくとも100万人の患者さんが、愛媛や鹿児島、そして沖縄や奄美大島などの島を中心に蔓延していたと推定されています。世界に先駆け行われた国家予算でのフィラリア防圧対策(コミュニティ全体を対象とした啓発活動、DECの投薬、血液検査など)により、日本は1988年に「フィラリア根絶」を宣言しました。
※「参考文献: WHO Buruli ulcer (Mycobacterium ulcerans infection)」
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マイセトーマ(菌腫)
マイセトーマ(菌腫)は、細菌や真菌(カビ)が慢性的、進展性に組織を破壊していく疾患であり、患部としては足に多く見られますが、足以外のどの部位においても起こり得ます。原因となる細菌や真菌は、40以上の種類が知られています。多くの場合、裸足で歩くことでできた小さな傷口から、細菌や真菌が皮下組織に侵入することで感染します。
マイセトーマは皮下の結節からはじまり、その病巣が徐々に増大していきます。通常、痛みは伴いません。次第に皮下から外に通じるトンネル(瘻孔(ろうこう))を形成し、感染菌の塊である粒子(’グレイン’)を含む滲出液を分泌するという特徴を示します。細菌が原因菌の場合には白〜黄白色調の粒子、真菌が原因の場合には黒色の粒子であることが多いです。マイセトーマは原因菌が多数にわたることからも、治療がかなり困難です。また、治療が不十分であったり未治療のまま放置すると、身体障害、外観の変形、ならびにそれに伴う社会的差別を招きます。また、もし傷口からの二次感染が起こりそれが敗血症に至れば生命を失うことになります。蔓延地域においては保健医療インフラ、健康教育が乏しいことに加えて、痛みがなくゆっくりと進行する症状のために、多くの患者は病態が非常に悪化した状態になってはじめて病院を訪れ、その段階では外科的に患部を切除あるいは手足を切断することが唯一の効果的な治療法となることが少なくありません。
マイセトーマの原因菌は世界中に分布していますが、特に蔓延しているのは、熱帯あるいは亜熱帯の「マイセトーマベルト」と呼ばれる帯状の地域で、ベネズエラ、メキシコ、インド、イエメン、エチオピア、ソマリア、スーダン、チャド、セネガル、モーリタニアなどの国が含まれます。
マイセトーマは2016年5月に開催された世界保健総会(World Health Assembly)において、18番目のNTDとし公式リストに収載されました。
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オンコセルカ症
オンコセルカ症は、河川盲目症とも呼ばれ、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)というフィラリアによる寄生虫症で、ブヨ(Simulium spp.)に繰り返し刺されることで感染します。
回旋糸状虫の成虫は、人の体内で感染幼虫を産みます。感染幼虫は、皮膚、眼、その他の臓器に移行します。メスのブヨは、感染した人の血を吸う際に、感染幼虫を同時に吸い込み、体内で回旋糸状虫を成長させ、次に人を刺した際に感染させます。
感染すると、多くの人は皮膚の激しい痒み、皮下結節、失明に至る眼障害などを発症します。これらはオンコセルカ症を診断する時の3大症状です。加えて、痛みはないもののリンパ節が腫脹することがあります。
一方、感染しても幼虫は体内で成虫になるまでに最長で1年かかるため、初期症状が現れない人もいます。成虫は10〜15年という長期間生きつづけて、数百万という感染幼虫を産みます。オンコセルカ症の症状は主に感染幼虫に起因するものであるため、多くの人々は感染初期には感染に気付きません。
感染幼虫が死ぬと、皮膚の痒みに加えて、激しい炎症や皮膚表面の色素変化を起こし「ヒョウ肌」と呼ばれる皮膚になります。これは、繰り返し掻くことによって皮膚が傷み、ヒョウの皮のような見た目になることを指し、皮膚の弾力性が失われます。さらに、感染幼虫が眼の中で死ぬと、初期は治療可能な角膜の病変となりますが、放置すればいずれ失明に至ります。視神経の炎症も発症することがあり、これも放置すると失明につながります。
オンコセルカ症は、2017年のWHOの発表によると感染者の99%がアフリカ31カ国に集中しています。残り1%はイエメン、および、ラテンアメリカ(ブラジル、ベネズエラ)の主にヤノマミ族で確認されています。
※「参考文献: WHO Buruli ulcer (Mycobacterium ulcerans infection)」
疥癬
疥癬(かいせん)は、ヒゼンダニというダニの一種が人の皮膚に寄生しておこる皮膚の病気で、手足、腹部、胸部、大腿内側などに激しいかゆみを伴う感染症です。2週間~2カ月間の症状のない期間のあと、特に夜間に激しくなる皮膚の痒みが生じます。皮膚の上に小さなニキビ状のブツブツ(丘疹・結節)がたくさんできたり、「疥癬トンネル」が手足の特に指間に認められる症状があります。疥癬トンネルは、ヒゼンダニが皮膚に潜り込んだときにできる通り道で、皮膚が剥がれカサカサとした線状の特徴的な病変のことを指します。
直接的に肌が触れ合うこと、また、衣類やリネン類を介して間接的に人から人へ感染します。疥癬には、通常疥癬と角化型疥癬の2つのタイプがあります。
通常疥癬で寄生するヒゼンダニの数は数十匹以下ですが、角化型疥癬では100万~200万匹であるとされ、その感染力に大きな違いがあります。角化型疥癬は、免疫力が低下した人などによく発症します。かゆみを伴わないこともあり、発見するのが遅れることもあります。角化型疥癬の場合は、はげ落ちた皮膚の中に大量のダニが含まれ高い感染力を有するために、治癒するまで他の人との接触が絶たれるように隔離が必要です。
通常疥癬は、駆虫薬(イベルメクチン内服やフェノトリン・ローションやペルメトリン・ローション外用)を1週間おきに2回投与で大半の症例が治癒します。このため、蔓延地域では集団投与による治療が、最近では推奨されています。角化型疥癬では、この他に角化した病変部の除去(例えば、サリチル酸ワセリンで皮膚を軟化、爪切り)などが推奨されます。
疥癬は、世界のどこでも発症が認められ、常時約2億人以上もの人々が感染を受けていると推定されています。2017年5月に開催された世界保健総会(World Health Assembly)において、19番目のNTDとし公式リストに収載されました。
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フランベジア(イチゴ腫)
フランベジアは、トレポネーマというスピロヘータを病原体とする風土病性トレポネーマ症の一種になります。風土病性トレポネーマ症には、フランベジア、風土病性梅毒(ベジェル)やピンタがあり、フランベジアは、これら3つの感染症の中で最も頻繁にみられるものです。
原因菌であるトレポネーマ・ペルテヌエは人にのみ感染します。
この疾患は、主に、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、太平洋の温帯で湿潤な熱帯雨林気候地帯の貧困な地域でみられます。感染者はほとんどが子どもで、医療支援を受ける環境からはほど遠く、「道の終わり」とよく表現されるようなところに住んでいます。貧困、社会経済的に整わない環境、および個々人の劣悪な衛生状況などが、フランベジアの拡大を促進しています。
感染の約75~80%は15歳未満の子どもになります。感染の伝播は、小さな傷から人から人への直接の接触で起こります。まず、痛みを伴わないできもの(丘疹・結節)から始まり、はじめは1つだけだった病変が複数個へ広がりを見せて、一部は潰瘍になります。治療をせずに放置すると、関節や骨が変形し、外観が損なわれたり、身体障害を引き起こします。フランベジアの初期病変は細菌に富んでおり、潜伏期間は、9-90日、平均で21日といわれています。
一番世界で罹患率の高いスピロへータによる病気は、梅毒です。梅毒は性感染症(sexually transmitted diseases; STDs)である点が、フランベジアとの一番の違いです。しかし、同じスピロヘータ属のために、梅毒のために開発された迅速診断キットは、フランベジアの診断のためにも有効です。現在、フランベジアの診断は、この迅速診断キットのおかげで奥地でもできる様になっています。しかし、梅毒との鑑別ができないなど、まだ課題は残ります。
フランベジアは、1950年代にはペニシリンの1回注射の集団投薬の保健対策のもと、患者数はだいぶ減ったとされ、この対策も打ち切りとなっていました。しかし、また患者数が増えてきており、その疫学的な把握が急がれています。現在、蔓延地域においては、注射よりも内服の方が簡易であるため(住民の受け入れの点でも有利)、アジスロマイシンの1回投与が推奨されています。アジスロマイシン1回投与は、1ヶ月程度の経過で患者さんの病変を治癒にまで持っていくことができ、大変有効な治療法です。
※「参考文献: WHO Buruli ulcer (Mycobacterium ulcerans infection)」
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